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【事 案】 貸した18万のうち3万円返さないので、殴るぞと言って6万円回収したら恐喝罪になるか?

【結 論】 貸した残金3万円だけでなく、6万円全部が恐喝罪になる。(最判S30.10.4)

 比較的ありがちなトラブルのうち恐喝罪を取り上げてみました。
 恐喝罪は、脅迫または暴行を手段として、反抗を抑圧するに至らない程度に相手を怖がらせ、財物の交付を要求し、相手方の処分行為に基づく行為によって、財物の占有を取得する犯罪とされています。
 つまり相手を脅かして、相手に何らかの財物を交付させれば10年以下の懲役になります。

 本事案では18万円貸していたが15万円しか返してもらえなかった。
 1年経っても返してくれないことに業を煮やし、3人で債務者宅に押しかけて、要求に応じないときは身体に危害を加えるそぶりをし、同行者は「俺たちの顔を立てろ」などと言って脅し、債務者を畏怖させて残金の倍額である6万円を取得したものです。
 まず債務者の身体に害を加えるような脅しをしているのですから、少なくとも脅迫罪は成立します。さらに畏怖させて金銭を交付させているのですから、少なくとも貸してもいない3万円については恐喝罪が成立します。

 では、貸したのに返してもらえなかった3万円についても恐喝罪は成立するのでしょうか。
 この点について裁判所は、他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を越えない限り、なんら違法の問題を生じない。
 けれども右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるとしました。
 つまり恐喝罪になるか否かは、社会通念上認容されるかどうかで判断される。そして相手が畏怖するような行為によって財物を交付させれば、恐喝罪になるということです。

 では当然返してもらえるべき3万円についても恐喝罪だとされたことは、どう説明されたのか。
 裁判所は、恐喝手段である場合には債権額のいかんにかかわらず6万円全額について恐喝罪が成立するとしましたので、これでは理由が分かりません。
 実は、恐喝罪には個人の財産を守ることのほか、被害者の意思決定や行動の自由も守る趣旨があるのです。

 そうすると、仮に脅かされなければそれまでのらりくらりと返済しなかった3万円を、任意で返うということもおそらくなかったでしょうから、やはり全額について恐喝罪が成立するとされても仕方無いことと思われます。
 たとえ貸した金を返してもらうという理由があったにせよ、手段や態様いかんではこちらが脅迫や恐喝の犯罪者になってしまいますので、気をつけなければなりません。

 私たち行政書士が内容証明をつくるときや、各種申し入れをするにあたって細心の注意を払うのもこのあたりです。そのような事案を抱えてしまったときにはご相談頂ければと思います。
 なお、財物が貸したお金ではなく物のときには、たとえ自分の物であっても窃盗などの奪取罪も問題になります。

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