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【事 案】 出世払いで良いとの約束で貸したお金を、相手が出世する前に返せといえるか?

【結 論】 相手が出世していなくても、返せと言える場合がある。(大地S50.5.22)

 出世払いで良いとの条件でお金を貸した。しかし相手が出世するまで、いかなる場合でもお金を返せといえないのか。
 金を借りた相手は、まだ出世していないから、返す義務はないと言うかもしれません。
 では自分が破産したときでも、返済請求ができないのでしょうか。

 本事案は会社と会社の間で争われたもので、金額も1億円という多額なものでした。
 お金を貸した側は、手形の不渡りを出して倒産(いわゆる破産)し、どうしてもお金を返してほしいので、内容証明で返済を求めた。
 一方借りた側は、繰越欠損を抱えているものの、一応会社は存続しているという状態でした。

 この問題について裁判所は、いわゆる出世払いとは単に不確定期限の到来ないし不到来の確定に至るまで、支払いを猶予するにとどまる不確定期限付債務と解すべきである。
 債権者の側において、破産あるいは倒産などの事由により弁済の猶予をなしえない状態に立ち至ったときは、当事者の意思解釈および契約関係における信義則に照らし、右合意はその基礎の喪失により債権者の側からの解除権の格子が認められる。
 債権者自身が、破産等により他人に対する債権を猶予する余裕のなくなったときにおいてすら尚各債務者の成功を待って、弁済を受けねばならない受忍を強制する拘束力を有しないなどと判示し、債権者の主張を認めました。

 すなわち、出世したかどうかは債務者の事情です。
 これに対して、破産や倒産は債権者の事情ですが、出世払いという合意は、債権者の事情により解除され得ると理解できます。
 その結果、債権者が内容証明で貸した金を返してくれと主張した時点で、出世払いの合意は解除されて弁済期が到来し、未だ借り主が出世したとはいえなくとも弁済しなければならないことになります。

 社会通念からみても、貸した側は温情により弁済を猶予したわけですから、貸した側が破産した場合にまで弁済を猶予するいわれはないといえましょう。

 一方、会社の事業が起動に乗ったときに弁済する出世払いとした事案では、弁済の猶予が認められたケースもあります(東地H8.10.31)。
 このケースは、貸した側に破産や倒産したという事情はなく、借り主側には返済できる程度に事業が軌道に乗ったとはいえないものでした。

 以上のように、出世払いという合意は曖昧なので、貸し手と借り手の相対的関係で判断される可能性があるので、出世払いの約束をするには十分な注意が必要です。

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