全画面で読む     全画面を閉じる
【事 案】 金を貸した相手がたまたま親の遺産を相続したが少なすぎる、友人に代わって遺留分を主張できるか?

【結 論】 遺留分減殺請求権を債権者代位の目的とすることはできず、友人に代わって遺留分を主張できない。(最判H13.11.22)

 友人に100万円貸したが返済期日を過ぎても返してくれない。電話や手紙、さらには内容証明で返済を迫ってみても思わしい返事がこない。
 そんなとき偶然にも友人の親が亡くなって、相当多額の遺産を相続することになりそうだ。法定相続だと500万円、遺留分でも250万円ぐらいにはなるはずだから、きっと返してもらえる。などと思っていたところ、友人は遺産分割協議でなんら主張せず10万円ぐらいしか相続しなかった。
 そこで友人の遺留分250万円を主張して、借金をとりもどすことができないかという問題です。

 民法には、債権者は債務者に属する権利を主張できる(債権者代位権)という規定があって、これによれば債務者に代わって権利を行使できるはず。
 しかし無制限にそれを許すと、相手は自分の権利を取られてしまうのですから残酷です。そこで借金の返済期がきていること、相手が自らその権利を行使していないこと、相手の一身尊属の権利ではないことなどが債権者代位権行使の要件とされています。
 この事案は、遺留分減殺請求権は一身尊属上の権利かどうかについて問題となりました。

 裁判所は、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、これを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位の目的とすることはできないとしました。
 すなわち、親族的身分に関する権利や財産でない人格的権利を、相手に代わって行使することはできず、遺留分減殺請求権もこれにあたる。相手が遺留分減殺請求をすると意思表示をしないかぎり、相手に代わってそれを主張することはできないということです。

 相手が持っている債権が年金受給権だったり、扶養請求権、慰謝料請求権など相手の固有の権利なら同様のことが言えます。とくに本事案では、そもそも遺産がなかったり、友人が相続放棄をしてしまえば期待できない財産ですから、相続という偶然の事情を使って、友人に代わって遺留分を請求するのは虫がよすぎます。

 民法には、これと似た制度として詐害行為取消権があります。詐害行為取消権は、相手が債権者を害することを知って自分の財産を処分してしまう、例えば借金に困って離婚し、妻に全財産を財産分与してしまうといったケースです。
 これを主張するには裁判でしなければならず厄介ですが、いずれも債権者の権利を守るための手段として使われています。

当事務所がお手伝いします弁済の申し入れ、契約書作成、公正証書起案