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【事 案】 売買契約があったことは、契約書が無い場合でも認められるか?

【結 論】 売買の事実が窺われ、売買に関して紛争が生じていないような場合には認められることがある。(最判H10.12.8)

 契約書は作っていないんですとか、借用書をとるにはとっているのですが有効でしょうかといった質問を、市民法律相談で受けることがあります。
 我が日本国民法は、人間は自らの意思によってのみ支配されるという自由主義を前提としていますので、必ずしも約束は書面による必要はありません。ちなみに書面が必要だと書かれているのは、保証契約など限られた場面だけで、意思主義という立場が基本的にとられています。
 しかし、約束さえあれば全て保護されるとなると社会は混乱してしまいます。約束をした当事者のどちらが正しいかを判断するにしても、それを証明する何らかの証拠が必要になります。
 やはり約束する意思を、何らかのかたちで外に表して、誰にでも分かる状態にしておく必要があります。

 では、どんなときでも契約書や借用書を作らなければならないのか。
 例えば相手が親しい友人や親族だから、それほど多額の約束ではないから、世話になっている相手だから、継続的に取引をしているから等々、私たちの周りでは必ずしも約束を書面にしないことがあります。

 本事案は親子間で土地の売買をしたが、売買契約書を交わさなかった。しかし後に親子関係が険悪になって、親が子に土地建物の明渡しを求めたものです。
 高裁は、売買の事実は認めがたいとして親を勝たせましたが、最高裁は次のような事実を総合的に判断して、親子間に売買があったと認めました。
 子らは敷地購入代金に充てるために、社内預金の払い戻しを受けていたこと。子らは問題の土地上にある建物を自ら工事して代金を支払っており、その建物に長期間住み続けたものの、親との間に紛争は生じていないことなどです。

 このような紛争があったとき、契約書に署名押印されていれば、その書面は真正に成立し、法律行為の存在が認められるという重要な意味をもちます。親子だからといって、財産や権利を移転するときに適正な契約書をつくっておかないと大変な目に遭うことを教えてくれる事案です。
 親子間でなくとも、例えば相手と不仲になったら、相手が破産したら、相手に相続が発生したら、相手が勝手に目的物を処分してしまったらなど、書面がないために被るリスクはとても大きいことを覚悟しなければなりません。

 領収書についても、契約書とおなじことが言えます。
 領収書は契約書とやや性格が異なり、書面上に法律行為が直接書かれていないので報告証書と呼ばれていますが、紛争が生じたときの証拠価値は契約書と同様に扱われています。
 したがって証拠として領収書が無い場合には、何らかの紛争が起きたとき極めて厳しい立場に立たされることになります。

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