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【事 案】 酔っぱらいが運転する車に同乗したとき、同乗者も危険運転致死傷罪の責任を負うか?

【結 論】 飲酒運転を幇助(ほうじょ)したときは、危険運転致死傷罪の共犯とされることがある。(最判H25.4.15)

 飲酒運転に対する罰則は、道路交通法と刑法でそれぞれ決められています。
 道路交通法では、交通事故を引き起こしたか否かにかかわらず飲酒運転として処罰されますが、人を死傷させると刑法の危険運転致死傷罪が適用されることがあります。
 従来、飲酒運転はじめ運転者に重大な過失があったときは、業務上過失致死傷罪が適用されていました。しかし刑の上限が5年(後に7年)にすぎなかったため、軽すぎるとして危険運転致死傷罪が設けられました。
 危険運転致死傷罪が適用されると、負傷事故は15年以下の懲役、死亡事故ならば1年以上20年以下の懲役となり、非常に重い刑が科せられます。

 それでは酔っぱらい運転で死亡事故を起こし、運転者が危険運転致死罪に問われたとき、同乗者は共犯の責めを負うのでしょうか。
 本事案は、運送会社の先輩後輩にあたる三人で酒を飲んでいたが、そののち後輩が運転する車に先輩二人が運転の了解を与えて同乗した。
 後輩は相当酔っぱらっており、時速100キロ以上で対向車線にはみ出し、対向車2台に激突させて2人を死亡、4人に傷害を負わせたとして、後輩本人は危険運転致死罪に問われた。
 そこで、同乗していた二人の先輩がm危険運転致死罪の共犯になるかが争われました。

 裁判所は、他人の犯罪に加功する意思をもって、有形、無形の方法によりこれを幇助し、他人の犯罪を容易ならしむるもの(最判S24.10.1)という共犯の解釈にもとづき、先輩二人は幇助犯にあたるとしました。
 すなわち後輩が車を運転するについては、先輩である二人の意向を確認し、了解を得られたことが重要な契機となっている。
 先輩両名は、後輩がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら、車の発進に了解を与え、その運転を制止することなくそのまま同乗して黙認し続けた。
 結局、先輩両名の了解とこれに続く黙認という行為が、後輩の運転の意思をより強固なものにすることにより、危険運転致死傷罪を容易にしたことは明らかであるとしました。

 まず後輩が運転することをそれぞれ了解したことが、後輩の犯罪に加功する意思とされたこと。そして運転を制止もせず黙認したことが幇助にあたり、後輩の危険運転致死傷という犯罪を容易ならしめたといえるでしょう。
 交通事故においては、単に同乗していただけなら罪は免れるという時代ではなくなったといえます。
 なお、刑法と道路交通法の違いは、刑法が一般法で道路交通法は特別法です。特別法が優先して適用されますから、まず道路交通法の適用が検討され、事故の結果と運転者の過失が重大なときは刑法が適用されます。
 ここで刑法の業務上過失致死傷罪には、酒の提供者や運転を黙認した者に対する処罰規定が無いので、運転者以外の者に共犯の罪を認めたことにこの判決の意味があります。

 一方の道路交通法には、車を提供した者、酒を提供した者等に対する処罰規定が独立して明文化されています。独立した条文があるのですから、刑法とは違って、いちいち共犯の罪を引き合いに出さなくとも処罰できます。
 車を提供した者は、酒酔い運転なら懲役5年以下、酒気帯び運転では懲役3年以下で処罰される可能性があり、この刑の重さは運転者と同じです。
 また、酒を提供した者や同乗者については、酒酔い運転では懲役3年以下、酒気帯び運転では懲役2年以下で処罰される可能性があります。
 酒を飲んでの運転はもちろん絶対にダメですし、運転者に酒を勧めるなどもってのほかですが、他人の車に乗せてもらうときであっても、運転者に酒が入っていたら処罰されることもありますので十分ご注意ください。

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