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【事 案】 幼児がテニスコートにある審判台の下敷きになって死んだとき、学校は管理者責任を負うか?

【結 論】 幼児が通常予想し得ない行動で事故が起きたときは、管理者は責任を負わない。(最判H5.3.30)

 国家賠償法は、公権力の行使についての賠償責任と、公の営造物の設置管理に関する賠償責任の2つを定めています。
 この事案は、6歳の幼児がテニスコートに設置されている審判台によじ登り、その後部からジャングルジムのように降りようとしたところ、運悪く転倒した審判台の下敷きになって死亡したものです。
 審判台は高さ約1.8メートル、重さが24キログラム、鉄パイプと木製の板で作られたもの。この事故まで、生徒が悪ふざけをして一度倒れたことはあったが、本来の用法に従って利用する限り転倒の危険は無いとみられる構造でした。

 子の保護者は、審判台の設置及び管理の瑕疵による事故だとして、学校の設置主体である町に国家賠償法に基づく賠償請求をしました。
 原審である高等裁判所は、テニスコートの設置管理者は、審判台が倒れて死傷事故を引き起こす可能性があることを通常予測し得たはずである。したがって審判台を地面に固定させるか、不使用時には片付けておくか、より安定性のある審判台と交換するなどして、事故の発生を未然に防止すべきだったとの理由で損害賠償請求を認めました。
 造営物の設置又は管理に瑕疵があったというためには、その施設が通常有すべき安全性を欠いていたことを証明する必要があります。
 そして安全性を欠いているかどうかの判断は、一般的抽象的にされるべきではなく、その営造物の構造や本来の用法、設置場所等の環境、利用状況などを総合的に考慮して具体的、個別的にする必要があるとされています。

 そこで最高裁は、審判台は本来の用法にしたがって使用する限り転倒の危険はなく、過去20年の間事故もなかった。
 幼児がいかなる行動に出ても不測の結果が生じないようにせよというのは、設置管理者に不能を強いるものであり、幼児が異常な行動に出ることのないようしつけるのは、保護者の側の義務であるとして高裁の判決をひっくり返しました。
 また設置者側弁護人は、転倒ではなく幼児が審判台から転落した場合を引き合いに出し、高裁のいう審判台を地面に固定したり、他の審判台と交換すべきだったという点を否定しました。

 すなわち、審判台を地面に固定しても他の審判台と交換しても転落事故は防ぎようがないではないか。そのような対策をしても設置者が責任を負わねばならないとすれば、結局は幼児に対する危険を全て除去しなければならないことになり際限がないということです。
 なかには、明らかに公の造営物の設置管理の瑕疵が原因となって引き起こされる事故もありますが、子どもに対する保護者のちょっとした気づかいや、日頃の安全教育で防止できるケースがかなりあるとみられます。
 どこが危険で、どんな遊び方をしたらよいのかについて保護者側も気を配ることが望まれます。

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