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【事 案】 人混みのなかで老人にぶつかってケガをさせたとき、歩行者同士であっても責任を負わねばならないか?

【結 論】 歩行者として通常の注意を払っていれば事故が回避できる場合には、注意義務違反がある。(東高判H18.10.8)

 本事案は、91歳の女性歩行者と25歳の女性歩行者が交差点内で歩行中に衝突し、老人が転倒して右大腿骨骨折などの傷害を負ったものです。
 老人側は加害者が小走りでぶつかってきて蹴飛ばされたと主張した。これに対し加害者側は、事故当時は交差点内に人が多く混雑して早足歩行は無理、交差点内で店を探すため立ち止まったところに被害者がぶつかってきたと、双方の主張が食い違いました。また転んだときの対応については、加害者側が老人の手などをつかんで支えようとしたとの主張もありました。
 これらの主張に対して裁判所は、当時は交差点内は通行人が多く立ち止まる人も多かったこと、加害者が立ち止まったとき加害者の背中から腰にかけて被害者が接触していること、加害者の足の靴が被害者にぶつかったことは認められないことなどから、加害者に注意義務違反はなかったと判示しました。

 注目すべきは本事案における損害賠償額で、損害金として3,200万円余りが申立てられたことです。そのうち1,500万円余りは介護費、入院・通院慰謝料は600万円と相当高額なもので、老人事故の特徴ともいえます。高裁では前述のとおり被告が全面無罪となりましたが、原審の東京地裁では被告側の注意義務違反を認めたので、三割の過失相殺をしても約780万円もの賠償金が命じられています。

 最近、自転車との接触事故が増加しています。中には自分から自転車にぶつかっていく、いわゆる自転車を標的にした「当たり屋」が増加しているとのことですので、本当に注意してください。

歩行者同士の事故でも、高齢者が被害者になると、かなり高額な賠償金の支払いが命じられる可能性があります。
 本事案で加害者とされたのは看護婦だったこともあり、事故時には老人を支える行動をとったこと、事故後の救急措置、老人が入院しているあいだの見舞いなど、判決文をみる限りでは十分なされていたようです。

 路上であれば、人対人の事故であっても警察に通報し、事故があった時点で現場確認は行われるでしょうが、これが店舗内など建物内部のときも被害者は警察に通報すべきです。とくに近年は、カートで店内を移動するような大規模店舗が増えていますので、カートでぶつけられたという事故が頻発しています。その場で警察に通報しないと、あとで証拠を揃え、過失傷害罪などで被害届や告訴をしなければならなくなります。
 スマホ見ながらの運転や歩行は論外ですが、交通弱者と思われがちな自転車や歩行者が加害者になることもあります。高額な賠償金を支払う羽目にならないよう注意してください。

当事務所がお手伝いします 事故原因調査、図面等資料作成、警察への被害届けや告訴、損害賠償申し入れ、示談書作成